出荷の台数と、行き先の国。会社の年次報告書の表を読む
フェラーリが一年に送り出す新車は、一万三千台あまりです。この数は、会社が毎年出している年次報告書に、国や地域ごとの表で載っています。その表を読みながら、なぜ台数を増やしすぎないのか、車がどこへ運ばれているのかを見ていきます。
CHAPTER 1一年の台数
1-1 2025 年は 13,640 台
フェラーリ(Ferrari N.V.)は、株式を取引所に上場している会社です。上場している会社は、一年の成績と事業の中身をまとめた年次報告書を出します。台数の話は、この報告書がいちばん確かな出どころになります。
その 2025 年版によると、2025 年に出荷した新車は 13,640 台でした。2024 年は 13,752 台、2023 年は 13,663 台です。2025 年は前の年より 112 台、率にして 0.8 パーセント少なくなりました。
この「出荷」という数え方には、注が付いています。XX プログラムや 499P Modificata のように台数をごく限ったレース用の車、一台だけつくるワンオフの車、中古車、そのほかの特別な販売は、数に入れていません。つまり 13,640 台は、販売店を通って客に渡る新車の数です。
台数が少し減ったことについて、決算の発表資料は、会社がそのように組んだと説明しています。車種の入れ替わりが大きい時期なので、出荷は前の年とほぼ同じになるようにした、入れ替わりは 2026 年も続く、という書き方です。
売れなかったから減った、という説明ではありません。同じ年の売上高は 7,146 百万ユーロで、前の年の 6,677 百万ユーロから増えています。報告書は、台数が減っても、車種の組み合わせが売上を伸ばしたと書いています。
1-2 2013 年からの線
2017 年版の年次報告書には、2013 年から 2017 年までの出荷台数が並んでいます。2013 年が 7,000 台、2014 年が 7,255 台で、そこから毎年少しずつ増え、2017 年は 8,398 台でした。2017 年は前の年より 4.8 パーセントの増加です。
2014 年という年には意味があります。フェラーリが株式を公開する前の年にあたるからです。2025 年版の報告書は、この年の 7,255 台を出発点にして、出荷は少しずつ増えて 2023 年に 13,663 台になり、そのあとの二年は落ち着いた、と書いています。
十一年かけて、二倍に少し届かないところまで増えたことになります。報告書の言葉でいえば「少しずつ」の増え方です。急に増やした年は、この表の中にはありません。
2018 年から 2022 年までの数は、今回確かめた二冊の報告書には載っていません。そのため表では間を空けています。途中の年を推し量って埋めることはしていません。
2017 年版の同じ表には、従業員の平均の人数も載っています。2013 年が 2,774 人、2017 年が 3,336 人でした。車の台数と同じように、働く人の数も少しずつ増えています。
1-3 これまでの合計は、資料に見当たらない
では、創業からこれまでに、全部で何台つくられたのでしょうか。よく聞かれる問いですが、今回読んだ公式の資料には、その合計の数が見当たりませんでした。そのため、このページでは合計の台数を書きません。
代わりに、2025 年版の報告書には次の一文があります。会社の創業からつくられたフェラーリの大部分は、いまも残っている、というものです。
報告書はこれを、車の価値の話の中で書いています。手放すときの値段が高く保たれることは、新車を買う人にとっても大事だという説明です。買うときに、あとでいくらで売れるかを考えに入れるからです。値段が保たれていれば、次の車にも乗り換えやすくなります。
その傾向は、台数をきびしく限った車で特に強い、と報告書は書いています。少なくつくることと、長く残ることが、ここでつながっています。
車を長く走らせるための仕組みも書かれています。世界に 181 の正規の販売店があり、整備と保証の仕組みで、車が使われるあいだずっと支える、というものです。合計の数は書かずに、残っていることのほうを書く。そこに、この会社が何を大事にしているかが出ています。
CHAPTER 2少なくつくる、という方針
2-1 「管理された台数」
年次報告書には、controlled volume strategy という言葉が何度も出てきます。台数を管理する方針、というほどの意味です。フェラーリの台数は、成り行きで決まっているのではありません。
報告書の説明はこうです。フェラーリという名前の魅力は、だれでも持てるものではないという特別さにある。その特別さを支えているのが、車種と台数が限られていることと、注文してから届くまでの待ちの列を保つことである。
待ちの列は、放っておかれているわけではありません。報告書は、列を見ながら調整していると書いています。特別さと、客の満足。その二つがちょうどよく釣り合うところを探している、という書き方です。
この方針は、値段にもつながっています。台数が管理されていることは、客が払ってもよいと考える値段を支える大事な要素だ、と報告書は書いています。
同じ報告書は、これを「リスク」の章にも書いています。特別さを守ることは、売上と利益の伸びを自分で抑えることになる。逆に台数を増やせば、特別さが削られるかもしれない。会社は、その両方を投資家に向けてそのまま書いています。
2-2 買っているのは、どんな人か
2025 年に売れた新車のうち、およそ 84 パーセントは、すでにフェラーリを一台以上持っている人が買いました。およそ 56 パーセントは、何台も持っている人です。
新車のほとんどが、前からの持ち主のところへ行っていることになります。報告書はこの数を、需要が続いていることと、持ち主の結びつきの強さを示すものとして挙げています。
一方で、報告書は客の層を広げることも書いています。さまざまなフェラリスティに、さまざまなフェラーリを。さまざまな場面に、さまざまなフェラーリを。この二つを合言葉に、車の種類を増やし、いまより広く、若い層にも届くようにするという方針です。
そのために、2026 年から 2030 年までのあいだ、平均して年に四つの新しい車種を出す計画だとしています。この計画は、2025 年 10 月に投資家に向けて発表されました。
売り方にも特徴があります。フェラーリは、ワンオフの車とサーキット用の車を除いて、正規の販売店だけを通して車を売っています。販売店は自社では持たず、評判、財務の安定、実績を見て選ぶと書かれています。2025 年の終わりの時点で、販売店は 181、店舗は 195 でした。
2-3 四つの柱
報告書は、車の品ぞろえを四つの柱に分けています。Range(通常のモデル)、Special Series(特別なシリーズ)、Icona、Supercar です。
いまの品ぞろえは、Range が九車種、Special Series が四車種、Icona が一車種、Supercar が一車種です。2025 年には六つの新しい車種を発表しました。その一つが、フェラーリで初めての電気だけで走る車、Ferrari Luce です。
出荷した台数を柱ごとに分けると、2025 年は Range が 92 パーセント、Special Series が 7 パーセント、Icona が 1 パーセントでした。数のうえでは、ほとんどが Range です。
残りの柱は、台数は少なくても役目が大きい、と報告書は書いています。Icona と Supercar は、ほかの車よりかなり高い値段で売られ、届けられた時期の業績を押し上げます。直近の Icona は Daytona SP3 で、2022 年の第4四半期から 2025 年の第3四半期まで出荷されました。
Supercar の最新は F80 です。報告書の本文は、2025 年の第4四半期に最初の何台かを届けたと書いています。ただ、柱ごとの図の注には、2023 年から 2025 年のあいだ Supercar の出荷は無かったとあります。二つの書き方が食い違っているので、ここでは両方をそのまま並べておきます。
エンジンの種類で分けた数もあります。2025 年は、エンジンだけで走る車種が七つ、ハイブリッドの車種が六つあり、出荷に占める割合はそれぞれ 58 パーセントと 42 パーセントでした。前の年の 2024 年は、ハイブリッドが 51.3 パーセントで、初めてエンジンだけの車を上回っていました。
CHAPTER 3どこへ運ばれているか
3-1 四つの地域
| 地域 | 2025 年 | 2024 年 | 2023 年 |
|---|---|---|---|
| EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ) | 6,346 | 6,204 | 6,063 |
| 南北アメリカ | 3,937 | 4,003 | 3,811 |
| 中国本土・香港・台湾 | 941 | 1,162 | 1,490 |
| そのほかのアジア太平洋 | 2,416 | 2,383 | 2,299 |
| 合計 | 13,640 | 13,752 | 13,663 |
報告書は、世界を四つの地域に分けて出荷を数えています。2025 年は、EMEA が 46.5 パーセント、南北アメリカが 28.9 パーセント、中国本土・香港・台湾が 6.9 パーセント、そのほかのアジア太平洋が 17.7 パーセントでした。
半分近くが EMEA です。フェラーリは、いまも地元のヨーロッパとその周りで、いちばん多く売れています。
三年のあいだに大きく動いたのは、中国本土・香港・台湾です。2023 年の 1,490 台から、2024 年は 1,162 台、2025 年は 941 台になりました。割合でいうと、10.9 パーセントから 6.9 パーセントです。
報告書は、地域ごとの台数は、会社が決めて配っているものだと説明しています。車種の入れ替わりの時期、待ちの列の長さ、それぞれの市場の事情を見て、どの地域にどの車を何台送るかを決める、というものです。
2017 年の割合と比べてみます。2017 年は、EMEA が 44.5 パーセント、南北アメリカが 33.5 パーセント、中国・香港・台湾が 7.3 パーセント、そのほかのアジア太平洋が 14.7 パーセントでした。八年のあいだに、南北アメリカの割合が下がり、そのほかのアジア太平洋の割合が上がっています。
3-2 国ごとに見る
2025 年2023 年
| 国・地域 | 2025 年 | 2024 年 | 2023 年 |
|---|---|---|---|
| アメリカ合衆国 | 3,401 | 3,452 | 3,262 |
| ドイツ | 1,481 | 1,476 | 1,472 |
| イタリア | 899 | 797 | 740 |
| 中東 | 626 | 479 | 451 |
| フランス | 598 | 547 | 490 |
| 中国本土 | 584 | 814 | 1,221 |
| イギリス | 571 | 933 | 1,011 |
| スイス | 507 | 481 | 482 |
報告書の表に名前が出ている国と地域を、2025 年の台数の多い順に並べました。いちばん多いのはアメリカ合衆国の 3,401 台で、全体の 24.9 パーセントです。四台に一台が、アメリカへ行っています。
二番目はドイツの 1,481 台です。三年のあいだ、1,472 台、1,476 台、1,481 台と、ほとんど同じ数が続いています。
地元のイタリアは 899 台です。2023 年の 740 台から、二年続けて増えました。フランスも 490 台から 598 台へ、中東も 451 台から 626 台へ増えています。報告書の注によると、中東は主にアラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、レバノン、カタール、オマーン、クウェートです。
減ったのは、イギリスと中国本土です。イギリスは 2023 年の 1,011 台から 2025 年は 571 台へ、中国本土は 1,221 台から 584 台へ、どちらも二年でおよそ半分になりました。
なぜこの二つが減ったのか、国ごとの理由は、今回読んだ範囲には書かれていませんでした。報告書が書いているのは、地域ごとの配分は会社が決めている、というところまでです。ここでは理由を推し量らず、数だけを写しておきます。
3-3 日本は、表のどこにいるか
この表に、日本の名前はありません。日本は「そのほかのアジア太平洋」の中に入っています。注によると、この区分は主に日本、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、韓国、タイ、インド、マレーシアです。
そのほかのアジア太平洋の出荷は、2025 年が 2,416 台でした。2023 年は 2,299 台、2024 年は 2,383 台で、少しずつ増えています。このうち日本が何台なのかは、報告書からは分かりません。このページでも、日本の台数は書きません。
日本について、報告書が書いていることはいくつかあります。フェラーリは、高級な高性能車の市場で、イタリア、フランス、日本、中国本土、シンガポール、韓国などで首位にある、というのがその一つです。
もう一つは、レースの話です。持ち主が同じ車種で競うフェラーリ・チャレンジには日本のシリーズがあり、2025 年は参加する人がはっきり増えた、と書かれています。
店舗の数は、地域ごとに載っています。2025 年の終わりの時点で、195 の店舗のうち、EMEA が 90、南北アメリカが 56、中国本土・香港・台湾が 22、そのほかのアジア太平洋が 27 でした。ここでも、日本だけの数は分かれていません。
車は、六十を超える市場で売られています。それでも、一年に一万四千台に届きません。数字を並べてみると、台数を管理するという方針が、言葉だけでないことが分かります。
SOURCES出典
- Ferrari N.V.「2025 Annual Report and Form 20-F」
https://ferrari.scene7.com/is/content/ferrari/Ferrari_Annual_Report_2025?s(2026-10-02 確認) - Ferrari N.V.「Annual Report 2017」
https://cdn.ferrari.com/cms/network/media/pdf/annual_report_2017_eng.pdf(2026-10-02 確認) - Ferrari N.V.「FY 2025 Results Press Release」
https://cdn.ferrari.com/cms/network/media/pdf/2026_02_10%20-%20Ferrari%20FY%202025%20Results%20Press%20Release.pdf(2026-10-02 確認)
この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。年や台数などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。資料どうしで書き方が違う所は、本文でそのように断っています。記事の中の社名と車名は、各社の商標です。