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NOTES 09

フェラーリは、年に何台つくっているのか

出荷の台数と、行き先の国。会社の年次報告書の表を読む

フェラーリが一年に送り出す新車は、一万三千台あまりです。この数は、会社が毎年出している年次報告書に、国や地域ごとの表で載っています。その表を読みながら、なぜ台数を増やしすぎないのか、車がどこへ運ばれているのかを見ていきます。

CHAPTER 1一年の台数

1-1 2025 年は 13,640 台

フェラーリ(Ferrari N.V.)は、株式を取引所に上場している会社です。上場している会社は、一年の成績と事業の中身をまとめた年次報告書を出します。台数の話は、この報告書がいちばん確かな出どころになります。

その 2025 年版によると、2025 年に出荷した新車は 13,640 台でした。2024 年は 13,752 台、2023 年は 13,663 台です。2025 年は前の年より 112 台、率にして 0.8 パーセント少なくなりました。

この「出荷」という数え方には、注が付いています。XX プログラムや 499P Modificata のように台数をごく限ったレース用の車、一台だけつくるワンオフの車、中古車、そのほかの特別な販売は、数に入れていません。つまり 13,640 台は、販売店を通って客に渡る新車の数です。

台数が少し減ったことについて、決算の発表資料は、会社がそのように組んだと説明しています。車種の入れ替わりが大きい時期なので、出荷は前の年とほぼ同じになるようにした、入れ替わりは 2026 年も続く、という書き方です。

売れなかったから減った、という説明ではありません。同じ年の売上高は 7,146 百万ユーロで、前の年の 6,677 百万ユーロから増えています。報告書は、台数が減っても、車種の組み合わせが売上を伸ばしたと書いています。

1-2 2013 年からの線

FIGURE一年に出荷した新車の台数。2018 年から 2022 年は、確かめた資料に載っていない
7,0002013
7,2552014
7,6642015
8,0142016
8,3982017
…
13,6632023
13,7522024
13,6402025

2017 年版の年次報告書には、2013 年から 2017 年までの出荷台数が並んでいます。2013 年が 7,000 台、2014 年が 7,255 台で、そこから毎年少しずつ増え、2017 年は 8,398 台でした。2017 年は前の年より 4.8 パーセントの増加です。

2014 年という年には意味があります。フェラーリが株式を公開する前の年にあたるからです。2025 年版の報告書は、この年の 7,255 台を出発点にして、出荷は少しずつ増えて 2023 年に 13,663 台になり、そのあとの二年は落ち着いた、と書いています。

十一年かけて、二倍に少し届かないところまで増えたことになります。報告書の言葉でいえば「少しずつ」の増え方です。急に増やした年は、この表の中にはありません。

2018 年から 2022 年までの数は、今回確かめた二冊の報告書には載っていません。そのため表では間を空けています。途中の年を推し量って埋めることはしていません。

2017 年版の同じ表には、従業員の平均の人数も載っています。2013 年が 2,774 人、2017 年が 3,336 人でした。車の台数と同じように、働く人の数も少しずつ増えています。

1-3 これまでの合計は、資料に見当たらない

では、創業からこれまでに、全部で何台つくられたのでしょうか。よく聞かれる問いですが、今回読んだ公式の資料には、その合計の数が見当たりませんでした。そのため、このページでは合計の台数を書きません。

代わりに、2025 年版の報告書には次の一文があります。会社の創業からつくられたフェラーリの大部分は、いまも残っている、というものです。

報告書はこれを、車の価値の話の中で書いています。手放すときの値段が高く保たれることは、新車を買う人にとっても大事だという説明です。買うときに、あとでいくらで売れるかを考えに入れるからです。値段が保たれていれば、次の車にも乗り換えやすくなります。

その傾向は、台数をきびしく限った車で特に強い、と報告書は書いています。少なくつくることと、長く残ることが、ここでつながっています。

車を長く走らせるための仕組みも書かれています。世界に 181 の正規の販売店があり、整備と保証の仕組みで、車が使われるあいだずっと支える、というものです。合計の数は書かずに、残っていることのほうを書く。そこに、この会社が何を大事にしているかが出ています。

CHAPTER 2少なくつくる、という方針

2-1 「管理された台数」

年次報告書には、controlled volume strategy という言葉が何度も出てきます。台数を管理する方針、というほどの意味です。フェラーリの台数は、成り行きで決まっているのではありません。

報告書の説明はこうです。フェラーリという名前の魅力は、だれでも持てるものではないという特別さにある。その特別さを支えているのが、車種と台数が限られていることと、注文してから届くまでの待ちの列を保つことである。

待ちの列は、放っておかれているわけではありません。報告書は、列を見ながら調整していると書いています。特別さと、客の満足。その二つがちょうどよく釣り合うところを探している、という書き方です。

この方針は、値段にもつながっています。台数が管理されていることは、客が払ってもよいと考える値段を支える大事な要素だ、と報告書は書いています。

同じ報告書は、これを「リスク」の章にも書いています。特別さを守ることは、売上と利益の伸びを自分で抑えることになる。逆に台数を増やせば、特別さが削られるかもしれない。会社は、その両方を投資家に向けてそのまま書いています。

2-2 買っているのは、どんな人か

2025 年に売れた新車のうち、およそ 84 パーセントは、すでにフェラーリを一台以上持っている人が買いました。およそ 56 パーセントは、何台も持っている人です。

新車のほとんどが、前からの持ち主のところへ行っていることになります。報告書はこの数を、需要が続いていることと、持ち主の結びつきの強さを示すものとして挙げています。

一方で、報告書は客の層を広げることも書いています。さまざまなフェラリスティに、さまざまなフェラーリを。さまざまな場面に、さまざまなフェラーリを。この二つを合言葉に、車の種類を増やし、いまより広く、若い層にも届くようにするという方針です。

そのために、2026 年から 2030 年までのあいだ、平均して年に四つの新しい車種を出す計画だとしています。この計画は、2025 年 10 月に投資家に向けて発表されました。

売り方にも特徴があります。フェラーリは、ワンオフの車とサーキット用の車を除いて、正規の販売店だけを通して車を売っています。販売店は自社では持たず、評判、財務の安定、実績を見て選ぶと書かれています。2025 年の終わりの時点で、販売店は 181、店舗は 195 でした。

2-3 四つの柱

報告書は、車の品ぞろえを四つの柱に分けています。Range(通常のモデル)、Special Series(特別なシリーズ)、Icona、Supercar です。

いまの品ぞろえは、Range が九車種、Special Series が四車種、Icona が一車種、Supercar が一車種です。2025 年には六つの新しい車種を発表しました。その一つが、フェラーリで初めての電気だけで走る車、Ferrari Luce です。

出荷した台数を柱ごとに分けると、2025 年は Range が 92 パーセント、Special Series が 7 パーセント、Icona が 1 パーセントでした。数のうえでは、ほとんどが Range です。

残りの柱は、台数は少なくても役目が大きい、と報告書は書いています。Icona と Supercar は、ほかの車よりかなり高い値段で売られ、届けられた時期の業績を押し上げます。直近の Icona は Daytona SP3 で、2022 年の第4四半期から 2025 年の第3四半期まで出荷されました。

Supercar の最新は F80 です。報告書の本文は、2025 年の第4四半期に最初の何台かを届けたと書いています。ただ、柱ごとの図の注には、2023 年から 2025 年のあいだ Supercar の出荷は無かったとあります。二つの書き方が食い違っているので、ここでは両方をそのまま並べておきます。

エンジンの種類で分けた数もあります。2025 年は、エンジンだけで走る車種が七つ、ハイブリッドの車種が六つあり、出荷に占める割合はそれぞれ 58 パーセントと 42 パーセントでした。前の年の 2024 年は、ハイブリッドが 51.3 パーセントで、初めてエンジンだけの車を上回っていました。

CHAPTER 3どこへ運ばれているか

3-1 四つの地域

TABLE地域ごとの出荷(台)
地域2025 年2024 年2023 年
EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)6,3466,2046,063
南北アメリカ3,9374,0033,811
中国本土・香港・台湾9411,1621,490
そのほかのアジア太平洋2,4162,3832,299
合計13,64013,75213,663

報告書は、世界を四つの地域に分けて出荷を数えています。2025 年は、EMEA が 46.5 パーセント、南北アメリカが 28.9 パーセント、中国本土・香港・台湾が 6.9 パーセント、そのほかのアジア太平洋が 17.7 パーセントでした。

半分近くが EMEA です。フェラーリは、いまも地元のヨーロッパとその周りで、いちばん多く売れています。

三年のあいだに大きく動いたのは、中国本土・香港・台湾です。2023 年の 1,490 台から、2024 年は 1,162 台、2025 年は 941 台になりました。割合でいうと、10.9 パーセントから 6.9 パーセントです。

報告書は、地域ごとの台数は、会社が決めて配っているものだと説明しています。車種の入れ替わりの時期、待ちの列の長さ、それぞれの市場の事情を見て、どの地域にどの車を何台送るかを決める、というものです。

2017 年の割合と比べてみます。2017 年は、EMEA が 44.5 パーセント、南北アメリカが 33.5 パーセント、中国・香港・台湾が 7.3 パーセント、そのほかのアジア太平洋が 14.7 パーセントでした。八年のあいだに、南北アメリカの割合が下がり、そのほかのアジア太平洋の割合が上がっています。

3-2 国ごとに見る

FIGURE国と地域ごとの出荷(台)。2025 年の多い順
アメリカ合衆国3,401
ドイツ1,481
イタリア899
中東626
フランス598
中国本土584
イギリス571
スイス507

2025 年2023 年

TABLE国と地域ごとの出荷(台)
国・地域2025 年2024 年2023 年
アメリカ合衆国3,4013,4523,262
ドイツ1,4811,4761,472
イタリア899797740
中東626479451
フランス598547490
中国本土5848141,221
イギリス5719331,011
スイス507481482

報告書の表に名前が出ている国と地域を、2025 年の台数の多い順に並べました。いちばん多いのはアメリカ合衆国の 3,401 台で、全体の 24.9 パーセントです。四台に一台が、アメリカへ行っています。

二番目はドイツの 1,481 台です。三年のあいだ、1,472 台、1,476 台、1,481 台と、ほとんど同じ数が続いています。

地元のイタリアは 899 台です。2023 年の 740 台から、二年続けて増えました。フランスも 490 台から 598 台へ、中東も 451 台から 626 台へ増えています。報告書の注によると、中東は主にアラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、レバノン、カタール、オマーン、クウェートです。

減ったのは、イギリスと中国本土です。イギリスは 2023 年の 1,011 台から 2025 年は 571 台へ、中国本土は 1,221 台から 584 台へ、どちらも二年でおよそ半分になりました。

なぜこの二つが減ったのか、国ごとの理由は、今回読んだ範囲には書かれていませんでした。報告書が書いているのは、地域ごとの配分は会社が決めている、というところまでです。ここでは理由を推し量らず、数だけを写しておきます。

3-3 日本は、表のどこにいるか

この表に、日本の名前はありません。日本は「そのほかのアジア太平洋」の中に入っています。注によると、この区分は主に日本、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、韓国、タイ、インド、マレーシアです。

そのほかのアジア太平洋の出荷は、2025 年が 2,416 台でした。2023 年は 2,299 台、2024 年は 2,383 台で、少しずつ増えています。このうち日本が何台なのかは、報告書からは分かりません。このページでも、日本の台数は書きません。

日本について、報告書が書いていることはいくつかあります。フェラーリは、高級な高性能車の市場で、イタリア、フランス、日本、中国本土、シンガポール、韓国などで首位にある、というのがその一つです。

もう一つは、レースの話です。持ち主が同じ車種で競うフェラーリ・チャレンジには日本のシリーズがあり、2025 年は参加する人がはっきり増えた、と書かれています。

店舗の数は、地域ごとに載っています。2025 年の終わりの時点で、195 の店舗のうち、EMEA が 90、南北アメリカが 56、中国本土・香港・台湾が 22、そのほかのアジア太平洋が 27 でした。ここでも、日本だけの数は分かれていません。

車は、六十を超える市場で売られています。それでも、一年に一万四千台に届きません。数字を並べてみると、台数を管理するという方針が、言葉だけでないことが分かります。

SOURCES出典

  1. Ferrari N.V.「2025 Annual Report and Form 20-F」
    https://ferrari.scene7.com/is/content/ferrari/Ferrari_Annual_Report_2025?s(2026-10-02 確認)
  2. Ferrari N.V.「Annual Report 2017」
    https://cdn.ferrari.com/cms/network/media/pdf/annual_report_2017_eng.pdf(2026-10-02 確認)
  3. Ferrari N.V.「FY 2025 Results Press Release」
    https://cdn.ferrari.com/cms/network/media/pdf/2026_02_10%20-%20Ferrari%20FY%202025%20Results%20Press%20Release.pdf(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。年や台数などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。資料どうしで書き方が違う所は、本文でそのように断っています。記事の中の社名と車名は、各社の商標です。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com